新作と3000 Days

Pineapple Thiefのブログにて新作について新しい話題があがっています。
タイトルは"Someone Here Is Missing"となったそうです。そして、一曲を外して全9曲、46分となるとのこと。
おそらく今までで一番短いアルバムとなると思いますが、LP時代のことを考えれば充分な長さです。
それに内容がよければこの長さで物足りなさを感じるということはないはず(Kayakの"Letters From Utopia"もどちらか一枚のディスクで充分満足できたので)。
ボーナスの存在も発表されているので、問題はないと思われます。

それと、カバーデザインをPink FloydやLed Zeppelinの作品に関わってきたStorm Thorgersonが担当するということです。
もちろんこれはとても期待をふくらませるニュースです。どんな作品になるのか、いろんな意味で注目しています。

さて、ここからは昨年発売されたベストアルバム"3000 Days"について。
選曲はまさにベストというに相応しいもので、ここはさすがに本人による選曲だけあります。
そして気になるリマスターの効果ですが、曲によっては相当の変化があります。特に打楽器系の鮮明さと重みが大きく向上しているのが印象的でした。個人的には"We Love You"や"Light Up Your Eyes"などでおっと思うところがありました。
リマスターは場合によっては雰囲気が変わるなど副作用が出ることがあるのですが、全体にバンドの音に合った方向で良くなっていて、損なわれたところがあるとは全く感じられませんでした。
ブックレットには一曲ごとに解説があり、中には興味深いものもありました("Remember Us"は好きじゃないけどみんなが好きだというから入れたとか)。
カバーやブックレットに使われている写真も雰囲気が良く、総じて持っていて損はないアイテムといえると思います。

問題があるとすれば、自分が"10 Stories Down"以降全ての作品を持っているので音質はともかく殆どの曲を聴いたことがあるという点で新鮮味に欠けることくらい。
逆に言うと、今まで聴いたことのない新しいファンの方には最初の一歩として迷わずお勧めできる内容です。価格も二枚組であることを考慮する必要もないくらい安価に購入できますから。
聴いたことのなかったのは(いくつかの曲は旧サイトでダウンロードできたので)"137"から"137" "Kid Chameleon" "How Did We Find Our Way"と"Variations Of A Dream"からは"Part Zero"となります。

"137"は重苦しく緊迫感のある雰囲気が貫くアコースティックなロック。サビらしいサビのない構成ですが、それらしきところで少し開放感が感じられるところ、それが再びシリアスな調子に戻るところが気持ちいいです。延々と繰り返されるヴォーカルのフレーズが強烈。
"Kid Chameleon" はアコースティック・ギターのアルペジオがリードする、まぁバラード。シタール風のシンセサイザーが面白い。途中でギターのフィードバックが入ってからの展開がお見事。シンプルなのに印象的なメインテーマ、効果的なギターがいい。今の音楽性に直結する気がする。
"How Did We Find Our Way"はアコースティックなバラード。昭和のフォークあたりにも通じる出だしですが、サビのメロディが極上。他に何か言うこともない、シンプルに素晴らしいメロディを持ったポップソングです。

"Part Zero"は冒頭のアコースティック・ギターに被さるふわりとしたキーボード、続くハードなギター、ひねくれたメロディ、どこをとっても完璧なPineapple Thiefの音です。後半はギターの独壇場。ライヴでも定番のはず。
"Vapour Trails"はフィードバックで鳴き続けるギター、エコーのかかったヴォーカルなどによる深い音響効果が印象的。Sigur Rosなんかに直接的に通じる感じがある。しかも"( )"と同時代だから凄い。
"Subside"はこれで三度目のCD収録になると思う。きっと思い入れも強いんだろう。全体を通して流れるのは管楽器(オーボエだろうか)系のキーボードのリフレイン。低音の音はバスーンにもチェロにも聴こえる。短いメロディの繰り返しが次第に盛り上がっていくミニマルな構成だけど、そのテーマがとても切ない。幕を引くシンフォニックなストリングスも素晴らしい。たった5分で胸をいっぱいにさせる、名曲。

最後に、第一作"Abducting the Unicorn"からの"Private Paradise"はバンドの象徴たる作品。冒頭のギターに、最初期から根っこは全く変わらない音楽性を見ることが出来るはず。既にして完成度はとても高い。同時にこの時期ならではの若々しい未成熟の魅力も感じ取れる。永遠の代表作であり続けるだろう。

それにしても、こうして初期からの代表作が一堂に会すると、本当にBruce Soordの作曲力は目を見張るものがあると思う。Vulgar Unicornで楽曲に関われなかったのが惜しまれる。
もっとも、それがこのバンドに繋がっているとするなら、やっぱり感謝することになるのかもしれないけれど。
とにかく、もしもこのバンドをよく知らない人がいて、公式サイトなりMySpaceなりで一曲でも気になる曲を耳にしたなら、是非このアルバムを手にとって欲しい。
必ず何か心に届く曲が見つかるはずだから。

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