イタリア二大ネオプログレ

The Watchが新作"Planet Earth?"を発表、発売は2/20となるようです。
曲目は以下の通り。
- Welcome to your Life
- Something Wrong
- Earth
- All the Lights in Town
- The World Inside
- New Normal
- Tourist Trap
カバーは"Primitive"と同じ感じですね。さりげなくギターとメロトロンが描かれているのが面白い。
"New Normal"でJohn Hackettが参加しているそうです。

さて、そんなThe Watch(正確には当時The Night Watch)とともに90年代イタリアのネオ・プログレ界で存在感を放っていたのがMoongardenです。
個人的に"Twilight"と"Brainstorm Of Emptyness"はこの分野の代表作だと思っています。
そんなバンドたちですが、片やメンバー総入れ替えで70年代Genesis風の音楽性に向かっていったのとは対照的に、Moongardenはより現代的な音を指向していきました。
それは"Round Midnight"で完成にいたり、その後活動を再開した際には再び典型的なシンフォニック・ロックに変化していたのですが、そこから一年をおかずに発表された作品では、まさに現代のロックバンドとしての姿を見せてくれました。
その作品が今回の主題、2009年作"A Vulgar Display of Prog"です。

再生を始めた瞬間から「現代的な」という印象ははっきりと感じ取れます。
エレクトロニカなシンセサイザー、シンセベースやリズムマシンまでを放り込んだ電子的な音響が耳に飛び込みます。そしてそれに絡むハードなギター。
ベースやドラムは前作と比べると主張の強い演奏はしていませんが、明快で安定した演奏でこの雰囲気を支えています。
それと、今回は殆どの曲でゲストのリズムギタリストが参加、David Cremoniはリードギターに専念し、随所で良いフレーズを聴かせています。
従って演奏そのものは素晴らしいのですが、ヴォーカルはやや弱いかも。発生が若干きつく、息苦しく感じます。音程も部分的に不安定な気がします。

1 - Boromir (6:51)
冒頭からフィルターを効かせたシンセサイザーとハイハットの刻みに煽られ、ギターが飛び込んで一気に走り出す。これ以上ないくらい印象的なオープニングです。
一転、ヴォーカルが歌い出すと伴奏はエレクトロニカ、グリッチ系のシーケンス。しかし重々しいギターリフが突っ込んで一気に盛り上がる。メロトロンも印象的に使われている。
後半は再び明るい曲調で走る。冒頭と同じギターリフ、シンセサイザーを逆順にたどって次の曲へ。

2 - Aesthetic Surgery (9:57)
そのシンセサイザーを受けてピアノが物悲しいリフレインを奏でるが、リバースシンバルから一瞬のブレイクからギターとともに強烈なメインテーマに突入。
基本は憂鬱なバラードとハードなメインパートの繰り返し。
中間部の長いインストパートを経てメインテーマへの回帰、更にギターソロへの流れはまさに「焼け付くような」という表現がぴったりくる熱気がある。大音量で聴くと頭が沸騰しそう。
最後はクラシカルなピアノの伴奏での弾き語り。
全編を通してシンセサイザーが効果音的に様々な表現をしているのが面白い。

3 - MDMA (7:14)
前曲の幕を引くピアノにギターのパワーコードが被さってくる。このオープニングは結構インパクトがある。
そして本編はエレクトロニカなシーケンスをバックにしたダンス音楽的な歌もの。しかしサビはシンフォニックなネオプログレに一変。ここはベースのフレーズが良い。
更に後半はGenesis直系というか"Brainstorm"の時の"Moonman Return"を思い出させる朗々たるギターソロ。まさかの展開だ。最後の決めなんか完全にGenesis。

4 - After MDMA "From Lezooh to Miryydian" (3:36)
完全なダンス音楽。あんまり詳しくないのだけど、IDMとかダウンテンポとかいったものに近いような気がする。
DJスクラッチまで入るのにはびっくり。最後にはメロトロンも。

5 - Wordz And Badge (6:06)
その余韻を断ち切るヘヴィなギター。そしてメタルなリフで走り出す。ファズベースも強烈。
リズムギターは一貫してかなりメタル。更に本作では珍しくキーボードはオルガンがかなり目立つ。2:50くらいのオルガンはなかなかTony Banks風。
それをきっかけに後半ではモダンなシンフォニック・ロックに。The Flower Kingsとかそっち系。
そして最後はメタルギター再び。メロトロン・コーラスも重なる。

6 - Demetrio And Magdalen (6:45)
一転してイージーリスニング風な静かなシンセサイザー。ヴォーカルが入るとメロディの所為かまたもThe Flower Kingsのような感じ。
この曲に関しては本当にこれ以上の表現は必要ない気がする。
最後はもはやこのバンドの看板であるギターソロの独壇場。エンディングの決めはやっぱりGenesisに聞こえる気が。

7 - Enter The Modem Hero (7:17)
4曲目と近い雰囲気のテクノ。加えてトライバル的な雰囲気も。
しかし何だかんだでギターが入ると盛り上がっていき最後にはこれで終わりかと思うくらいのテンションに至る。

8 - Compression (17:12)
公式サイトによればMike RutherfordとAnthony Phillipsの作品を再構成したものであるらしいです。
それについてはよく知らないので何とも言えないですが、確かに前半の雰囲気は非常にGenesisを思わせます。こういう曲ではヴォーカルがPeter Gabrielと似て聞こえるのも新発見。
5分過ぎくらいから呪文のようなヴォーカルが延々と絡み続け、演奏が段々高まっていくと9:35からは四つ打ちのビートに乗せ完全にダンス音楽化。ここにきてヴォーカルもラップの様相を呈していることに気付く。
そして演奏はメロトロンとギターを中心にシンフォニックに変化(さりげなく変拍子だったりする)、絡み合ったまま消えていく。

電子的な音に塗れた現代的な作風ですが、各所にあるギターやキーボードのソロ、和声、アレンジなどを聴けば「Genesis系」であることに変化はないことは明らか。
個人的には冒頭二曲があまりに印象的で他の曲は比較するとちょっと落ちる感じはあったのですが、どちらかといえば聞き込むごとに良さがわかってくるタイプの作品な気がします。
ただ、意図的なのかどうなのか歌詞も曲も繰り返しが多いのでそこが気になると冗長に感じてしまうかも知れません。ヴォーカルそのものは意外とメロディアスではないところも多いです。
しかし、最後のような曲は今の(非プログレの)音楽ファンはどう感じるのか少し気になります。
どちらかといえば若い人向きな作風ではあると思うのですが。

Moongarden - Official
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