世間ではエイプリルフールですか。

窓の社を見て思い出しました。
僕も何かやりたいなーと思わなくもないのですが、存在しない読み手に嘘をつくほどむなしいこともないですしね。

あと、YouTubeの再生ページが変わっててびっくりした。
さすがにこれはエイプリルフールではないよね……?

さて。
今回は予定通りThe Amber Lightで"Play"の紹介をしていきますよ。

前作"Stranger & Strangers"から三年をかけて制作された本作では、プロデューサーとドラマーの交代という大きな変化があり、それに伴って音楽性も少なからず変化を見せました。
最も大きいのは、音質がアナログな暖かい音からデジタル的な透明感のある、現代的な音にかわったことでしょう。
加えてドラムやベースも前作までのような主張のある演奏ではなくなり、かなりシンプルになりました。
とはいえ、八分音符での同音連打を多用するベースのスタイルは大きく変わったわけではないのですが。
ドラムに関しては三曲でPeter Edererが引き続き叩いていますが、他の曲と大きな違いはありません。従って、新ドラマーであるRobert Fischerの力量は未知数です。
このように演奏が変化したこともあり、相対的にギターが大きな比重を占めるようになりました。
音そのものはこちらもいくらか変化しており、全体的にシャープでクリアになったように思いますが、ダブルギターの絡みやエフェクトを駆使した多彩な表現が格好いい。
キーボードの音数も増えているようで、プログレっぽいオルガンやメロトロンは影を潜めた変わりに多彩なシンセサイザーで楽曲の色を演出している。
そしてヴォーカルは今回もほぼ完璧。最高のロックヴォーカリストだと思う。

1. Moody
いきなりハードなギターのコードを叩き付ける強烈なオープニングトラック(試聴版にあるカウントはなし)。
左右に振られたダブルギターが時折主導権を交代しながら絡むアンサンブルがとにかく格好いい。
ハードにかき鳴らすクランチな音も良いけど、後半現れるクリーンの音も魅力的。
シンプルなドラムとベースは疾走感を出すには良い感じ。

2. All Over Soon
跳ねるようなリズムが印象的な、かなりポップな作品。
ベースはラインはシンプルながら目立つ。ギターはサビの入りの決めがなかなか良い。
エフェクトや編集を施されたヴォーカルは前作までとのコンセプトの違いを明確に示している。
最後のヴォーカルはかなり情感過多な気もするけれど印象的ではある。

3. Waste
ギターがフィードバックで叫ぶオープニングにドッキリさせつつ、中身はメロディアスなポップロック。
繰り返しが主体のわかりやすいメロディのおかげで耳に残りやすい。
二本のギターとリズムセクションの掛け合いが絶妙。

4. Drake
前曲までと打って変わって落ち着いたピアノで幕を開けるバラード。
他の曲と比べるとギターは地味ながら、ボリュームやトレモロなども使ってさりげなく多彩な表現を見せる。
メロディラインやヴォーカルの表現、憂鬱感のある曲調など比較的"Goodbye to dusk..."に近いように思う。

5. Never Fade Out
本作の中でもトップクラスの「良い曲」。
ポップスとして申し分のないメロディとわかりやすい演奏は、シングル曲の"Waste"よりもラジオ受けしそうだ。
ここでもギターは良い演奏を見せているのだけど、この曲に限ってはまずメロディの良さに惹かれる。

6. The Deep Twist
"Drake"に続いて、というよりそれ以上に落ち込んでいく曲調のバラード。
冒頭の生々しいライドシンバルの音が印象的。全体的にドラムが他の曲より生っぽい音で取られているような気がする。
どこまでも落ちていくようで実はわかりやすい起伏と盛り上がりがあり、それが却って暗い印象を決定づけているかも知れない。
終盤に現れる管楽器風のシンセサイザーが、出番は少ないにも関わらず耳に残る。

7. Fire Walk With Me
一転、険悪なギターリフから始まる、シリアスなハードロック。
サビで狂おしく呻くギターとストリングス、ピアノを用いたキーボードによる、スパイ映画のサントラ風な作品。
短いが、曲調が強烈なだけにかなり印象的。
このバンドの曲でいえば"Gangsters"に通じるものがあるような気はする。

8. Still Going Nowhere
"Stranger & Strangers"からの再録。アレンジだけでなく、メロディも微妙に変えて歌っている。
おそらく多くの人は"Strangers"版の演奏の方が良かったと思っていると思うが、元々曲が良いだけにこちらが駄目という訳でもない。
個人的にはオリジナルで印象的だったギターのフレーズがなくなったのが残念。

9. Does It Ever Get Better
バンドの歴史上初めての「長調の曲」。
従って本作のみならず全作品を通して一番明るくてポップな曲。
サビの"Does it ever get"コーラスなんか"A New Atlantis"と同じバンドの作品とは思えないほど健康的な空気に満ち溢れている。
リズムのノリが良いためドラムは本作の中では活きが良い。

10. Play
"Waste"や"Never Fade Out"と共通するイメージのポップなロックバラード。
その二曲と比べるとサビが長調なためただ悲しいだけではない希望を感じさせる表情がある。
タイトル曲だけあってか非常に本作のイメージをほぼ体現した内容。

11. No Love Lost
重々しいリズム、シリアスなメロディ、混沌としたギターとキーボードのアンサンブルなど、本作随一の存在感を放つ。
シンセベースとドラムの重苦しくも単調なリズムに支えられてヴォーカルは加工されて断片をばらまき、ギターはフィードバックで泣き叫びファズで唸り、喘ぎのようなシンセサイザーが流れ続け、最後にはシリアスなストリングスの和音に収束していく。
最後のシンセにもメロトロンにもサンプルにも聞こえるストリングスの音が好み。

12. ...and then it stopped raining
ピアノとアコースティックギターによる弾き語り風のバラード。
歌のメロディはどうにも憂鬱で、魅力的。中盤でベースが呟くフレーズも良い。
遠くで鳴り響く鐘の音が悲劇的な印象をより強めていると思う。

特に存在感がある曲は"Moody"と最後の二曲。
"Moody"はギターバンドとしての力量を見せつける名演。
最後の二曲は"Play"で光が見えてきたと思わせる気分を一気に突き落としてくれるおかげでインパクトが凄い。
総じて、そこはかとない孤独感、焦燥感を掻き立てる内容だと思います。
また、聴きやすいメロディを持ったポップな曲をしっかり収録しているので通して聴いても中だるみしません。
地味になったリズムセクションやストレートな曲構成など旧来のファンには不満に思えるでしょうが、作曲と演奏のレベル、洗練度は非常に高く、所謂「プログレ」にこだわらなければかなりの良作であることは間違いないと思います。
現代的な音が好きで落ち込んだときのお供が欲しい人にお勧め。個人的にはストライクでした。
予想通りPineapple Thiefなんかのファンにもお勧めできるかな。

しかしながら、ここで聴かれる音が結果的にLouis Gabbianiの脱退を招いたのだと考えると少し複雑な気持ちもある。
Louisの動きは全く追えないし、バンドの今後の活動も不透明だしね。

MySpace - The Amber Light

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