感想:Metamorphosis

他に話題がある事を今更思い出したけど、予告したのでレビューはやります。
とりあえず、急ぎの話題としてはGForceのM-Tron Proがほぼ予告通りに発表されました。
27日の発表は宣言されていたのでこまめに見てましたが、一時的にトップが変わってたりしてびっくりした。

そのMellotronといえば、Magentaを含むシンフォニック・ロックではよく使われる楽器でもあります(よし、話題が繋がった)。

さて、Magentaの"Metamorphosis"です。
このバンド、一作目から今まで、作品毎に少しずつ作風を変えてきました。
一作目"Revolutions"はスケールの大きな正統派の大仰系シンフォニック・ロック、続く"Seven"では大きな変化は無いながらクラシカルな気品と叙情的なポップセンスを深めたと思います。更に"Home"では器楽の派手さを抑えた上品な歌ものロックの印象が出て来ました。
そして、今回の作品で見せた最大の変化は、全体の音がハードかつシャープになった事でしょう。
特にハードエッヂに攻めるギター、生の小編成ストリングスによる生々しい音、Tim Robinsonの復帰によるリズムのイメージの変化が、全体としてざらついた、インダストリアルな印象さえ覚える様な鋭角な音の雰囲気を作っていると思います。
全編的にギターが前に出ますが、明快なフレーズで曲を引っ張る役割が主で、それほどテクニカルな面を前面には押し出していません。これまでの作品でキーボードが担っていた役割を一部引き継いだ印象で、そのぶんキーボードは背景に徹した部分もあります。
何より、変拍子も駆使したプログレ大作指向が久々に復活、もしかしたら第一作以来のダイナミックな展開、演奏が楽しめるのが嬉しいところ。



1:The Ballad Of Samuel Layne
静かに何かが近づいてくる様な、いかにもなオープニングから変則リズムの決めを経て始まる。いきなりストリングスが大々的にフィーチャーされる。1:48ではTroy DonockleyのUilleann Pipesも現れる。
その後基本的には重々しくシリアスな調子で進むが、途中でふわっとしたコーラスを挟んだり、少しポジティヴな調子(4:22-6:56とか)やバラード調(6:57-7:46)に展開したりする。が、それを過ぎると本作中最もヘヴィなギターが飛び込み、強烈なシンセサイザー・ソロ(8:11)まで出てくる。ここが最初のクライマックスかと。
その後はメロディアスに進む。11:33あたりで一旦オープニングに戻って次のクライマックスに。鋭角で重々しいリズム、饒舌なギター、背景を埋め尽くすストリングスを伴って大いに盛り上がる。続くアコースティックギター弾き語りのバラードパート(14:50)もいい。そこからまたストリングスを伴ってシンフォニックに盛り上がり、エンディングに。
・一編の映画の様なストーリー性のある構成の大作。何度かUilleann Pipesの音が現れるためケルティック系の映画音楽の様なイメージもある。

2:Prekestolen
前曲終わりのシンセを引き継いで、サックスっぽい音のメロディ、鉄琴系のシンセのリフレインが入る。このリフレインが一曲通してずっと鳴り続ける。
全体的にキーボード系とストリングス中心の静かなバラード。中盤Uilleann Pipesが現れ、終盤リズムが入ってくるとそのままソロに発展。
・ここでもUilleann Pipesは中盤以降出ずっぱり。

3:Metamorphosis
ふたつのギターが重なり合い、更にストリングスが重なってくると一気にドラム、ベースが飛び込んできて変拍子のリフに。初っ端から物凄い盛り上がりだ。リズムのテンションがとにかく高い。1:41の短い決めもかっこいい。
2:09くらいからがメインパート。リズムは8beatに変化。この辺ではシンセも従来と同じような使い方をしている気がする。しばらくこんな雰囲気で進む。
三拍子のバラードパート(5:58)。引き継いでシャッフルで進む。9:56からはシンプルなビートで疾走感が気持ちいい。
例のかっこいい決めを挟んでメインパートに戻る(10:47)。バラードを挟みつつ(12:02-12:48)段々と叙情的に盛り上がっていき、エンディングが近い事を予感させる。
17:10で深く沈み込むが、ギターソロから再び盛り上がっていく。
突然音がさっと消え、ピアノのコードをバックにした静かなヴォーカルパート。そこにリズムが入り、三度メインパートに回帰(19:39)。ヴォーカルが高らかに歌い上げると印象的なコーラスのリフレインが現れ、ギターとストリングスもそのリフレインに加わり大団円。最後は静かなストリングスで次の曲に引き継ぐ。
・一曲目と音の構成は同様だが密度は更に高くなった。23分というサイズを飽きさせずに最後まで聴かせる。そしてエンディングは涙もの。公式にあるレビューでも言われていたが、ライヴでは観客の大合唱を誘うと思う。
余談ながら、The Collectionの編集版は3:45までと17:07以降を繋いだもの。

4:Blind Faith
重苦しくシリアスなバラード。しかしハードなギターリフが出てくると、さびでは一転してポジティヴな響きが出てくる。
そして最後は前曲エンディングにも通じる映画音楽のようなストリングスのテーマ。締めくくりの一言"Wake Up."。
・シンプルな構成だけど最初と最後の印象が全く違う。最後、壮大なストリングスがふっと途切れて"Wake Up."とささやかれるところではっとする(The Collectionではカットされてたけど)。

全体として、大作はハードでダイナミックなシンフォニック・ロックの魅力を存分に伝えてくる。この二曲はともに一曲で満足というくらい充実した聴き応えがあり、通して聴くと映画を一本見終わった様な満足感が得られる。
一方の小品は少しエレクトロニックな感触がある気がする。派手な存在感はないけれど、特に二曲目は密度の高い曲の合間で緩衝材としての機能を果たしている。
四曲目に関しては大作と共通する様な作風も後半に出てくる。この一曲で本作の要素をコンパクトにまとめられていると言える。

とにかく、充実した素晴らしい内容です。最高傑作という謳い文句は全く大袈裟ではないでしょう。
バンドのファンは勿論プログレファン、映画音楽ファンにまでお勧めできると思います。
弱点は、曲数が少ないという絶対的な問題で、曲調のバリエーションがやや物足りないところ。特に"Anger"系の曲がないのが少し寂しい(Chrisのクラシックギターも出番がほぼ無い)。
とはいえ、大作を軸に据えた内容で洗練された作品を作った場合に必ずと言っていいほど発生する現象ではあるので(Disciplineしかり、Salem Hillしかり、Eyestringsしかり)、ボリューム感、洗練度とバリエーションというのは相容れないものなのかも知れない。

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