WIsdom Of Crowds

感想を書こうとずっと思いつつブログ自体を放置していたわけですが、やっぱり書いておこうと。
Bruce SoordとJonas Rankseのプロジェクト、Wisdom Of Crowdsです。
このコラボレーションを示す話題はBruceの旧ブログのころから断続的に挙がってきていましたが、
その実態が明らかになったのが数年経ったこの春、そして丁度1ヶ月ほど前に発売となりました。
プロジェクト名としてはBruce Soord with Jonas Renkse、アルバムのタイトルがWisdom Of Crowdsとなっているようです。

Bruceは言うまでもなくThe Pineapple Thiefのリーダー、Jonasはスウェーデンのダークなメタルバンド、Katatoniaのヴォーカリスト。
両者の経歴や音楽性の関係にStorm Corrosionを思い出す人もいそうですが、あのプロジェクトほどマニアックな感じはなく、元バンドの音楽性を活かしながら割とわかりやすいポップミュージックに落とし込まれているように思います。

やはりThe Pineapple Thiefと比べてどうかという話になるのですが、単純な上位互換だったり逆にTPTの出来損ないみたいな印象は全くありません
最大の違いはやはりヴォーカルになるのですが、 楽曲の面ではかなりロックど真ん中になってきた最近のTPTと比べるとダンスミュージック、エレクトロニカ的な要素が強く出ています。
シンセサイザーを初めとしたキーボードの活躍はTPT以上に大きく、対するギターもかなり前に出ています。
一方でTPTの象徴でもある憂鬱な弾き語りや奇数拍子などはなくなり、ドラムが全体を通してループで構築されている事もあり、直線的なリズムで走るなイメージが強くなりました。
今までのようにプログレ的な感覚で聴くと延々と続くリズムパターンが単調と感じられるかも知れません。
そして、最大の呼び物であるJonasのヴォーカルは落ち着いた低いトーンの歌声で、電気的で痺れそうな音の中で一本筋の通った芯になっているように思います。
これが彼を起用した狙いでもあるのでしょうか。

また、クレジットを見ると一部の追加のシンセサイザーを除きヴォーカルがJonas、楽器がBruceとされています。
基本的に全部自身で演奏しているという事ですが、初期にはキーボードも担当していましたしベースの経験があるのも明言していましたから、あまり意外な事ではないと思います。


1.Pleasure (6:10)

エコー強めなギターとアンビエントなシンセサイザーが漂いリズムマシンとシンセベースがビートを刻む。要するにエレクトロニカ。
ドラムがループに代わって以降はTPT直系のギターロックという雰囲気も出てきます。そしてピアノの和音が彩るサビ、続くギターソロとBruce節が続き、最後は珍しくクラシック・ギターの演奏で締める。

2.Wisdom Of Crowds (5:02)
ハーモニウム風のキーボードが印象的。リズムは2ステップとかそっち系?
メロディは間違いなくBruceらしい切なくて屈折した感じ。終盤はサビにギターソロが絡んで盛大に盛り上げる。
二番目の動画に使われた曲。

3.Radio Star (4:34)
インダストリアル色もあるやたら重々しい曲調にびっくりするが、サビは全く対照的にピアノ伴奏の清冽なバラードだったりする。
このメロディはChristinaの声でも似合う気がしました(要するにMagentaっぽいという事ですが)。

4.Frozen North (6:31)
二種類のアコースティック・ギターとストリングスが物悲しいイントロ。
ネットで公開されている編集版とは最初のヴァースが長いだけでそれほど違うわけではありません。
やはり沈み込んだ曲調から立ち上がるような最初の間奏と後半のグリッチなギターパートが聴き所。ベースも地味に良い演出してます。

5.The Light (7:12)
前奏は意外にサイケデリック。こういう音は何というジャンルだったか思い出せないな。
そこから四つ打ちの結構キャッチーなポップスになるも、まさかのダブステップ調のパートを挟んだりするので油断ならない。
ヴォーカルのテーマをギターソロでなぞるところまで一直線に盛り上がる。

6.Stacked Naked (4:53)
LFOで唸るシンセとディレイをかけたギターのシークエンス、勢いのあるリズムパターン。
サビのメロディがとてもいい。個人的にこのアルバムで一番耳に馴染んだ曲です。多分シングル向き。
最初の動画で使われていた曲がこれ。

7.Pretend (5:23)
シタール風のイントロといいブルージーなギターといい、本作の中では若干異色な曲。
なんとなくEclatやIluvatarみたいなネオ・プログレを思い出したり。
結構開放的で明るい曲調のようで、途中で屈折していくあたりBruceらしい。
広告動画で使用。

8.The Centre of Gravity (5:36)
IDM、エレクトロニカ的なリズムにTPT直系の憂鬱なバラードを乗せた名品。
ピアノが物悲しさを増長させているし、3:28と4:19に一段ずつ深いところに踏み込んでいく感じが良い。

9.Flows Through You (11:38)
トランスやハードスタイルを取り込んで疾走するダンストラック。
ファンはリズムの表現に"Private Paradice"を思い出して少しニヤニヤ出来るかも。
7:17で一端終わり、1分の間を置いてアルバム全体を振り返るようなバラードが始まる。
5、6曲目に近いイメージですが、最後の最後に、ここが一番TPTに近いかも知れません。


全体的な印象として、エレクトロニカ的な要素や多彩な音色など初期のTPTに近いようなイメージもあり、ファンにとっては新鮮でもあるとともに懐かしくも感じるように思います。
それでも本作のような明確かつ多様なダンスミュージックの要素を取り入れるのはTPTでは見られなかった面で、個人的にはBruceの音楽性の深みを垣間見たように感じました。
一方、Jonasのヴォーカルは明らかに今までBruceの曲にはなかった要素で、これがかなりアルバム全体の印象に影響を与えていると思います。

結論としては二人の優れたミュージシャンが手を取り合う事で音楽のレベルを高める事に成功した作品と言えるのではないかと。
とはいえ、バンド的な呼吸は当然ながらほとんど感じられなかったので、現在制作中というTPTの新作もまた楽しみにしたいところではあります。

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